恋人と一緒に過ごす休日に買い物くればデートということで幸せの絶頂であるはずなのに、


「何でこんなに空しいんだろうね…」
「何しているんだスザク、早く次に行くぞ!」

恋人が買い物に夢中だからだと思います。

「あの本もいいが、この本もいい…、どちらにするべきか…」
「両方買えば?」
「いや、もっと他に気に入るものが、あるかもしれないし、さっき見たのも中々興味深かったし…」
「……。」
「やっぱりさっきの方が、最新だな、とりあえず次のところを見たら、また戻っていいか?」
「…ルルーシュのいいように」
「よし、じゃあ行くぞ」

まぁ楽しそうなルルーシュを見る事が出来るというのは、自分も嬉しいし

「これは、これで」
「何か言ったか?」
「んーん、何でも」



サン・ジョルディの日


欲しがっていた本を手に入れ、会場全てのブースを見終わった二人は、初夏のような陽気と、大勢の人の熱気で渇いた喉を潤すために、会場近くの喫茶店で寛いでいた。

「結構人居たね」
「まぁ、毎年開催されて居るし、サイトや広告で告知されているからな」
「ところであれ、何のイベントだったの?」
「お前知らなかったのか?」
「何かのチャリティって事は解ったんだけど…」
「会場のステージでも、ステージ横のボードでも説明されていたのに」
「申し訳ないです」
「…まぁ、いい。スザクだしな。さっきまで行っていた会場でやっていたのは、『サン・ジョルディの日』を記念としたイベントだ。」
「『サン・ジョルディの日』って?あまり聞かないけど、どういう日なの?」
「日本ではあまり定着していないからな、元はスペインのカタルーニャ地方に伝わる守護聖人サン・ジョルディを祭る日だ」
「何か凄い事をした人なの?」
「よくあるお伽噺だ、悪いドラゴンに悩まされていた国でお姫様が生贄にささげられた、今まさにドラゴンに食べられるとなったお姫様を、助けに来た騎士・サンジョルディがドラゴンを倒し、救い出す。そしてサン・ジョルディはドラゴンを倒した時に、ドラゴンからあふれ出した血から咲いた薔薇をお姫様に愛の証として捧げた。という話が元になって、この伝説の騎士サン・ジョルディを愛の守護聖人とたたえ、彼が死んだ4月23日に愛する人達に美と教養、愛と知性のシンボルとして、1本の薔薇と1冊の本を贈って祝いあうのさ」
「へぇ、凄いね」
「ま、バレンタインみたいなものだな、あちらよりはマイナーだけど。それでさっきの会場では本と薔薇を売っていたわけだ、ステージじゃ本の読み聞かせや、劇もやっていたしな。ちなみ本と薔薇の売り上げは募金されることになっているらしいぞ」
「バレンタインみたいな…?」
「だから本と薔薇を贈りあう日だ」
「えぇっ?!」
「何を慌てている?」
「だって僕、本も薔薇も買ってない!」
「もっていないな」
「急いで買いに行かなきゃ」
「何で?」
「何でって、薔薇と本を贈りあって愛を確かめる日なんだろう?」
「別にそういう日になっているが、そのようにしないといけないと、決まっているわけではない。それに俺もお前に本も薔薇も買っていない」
「そうなの?」
「あぁ。ナナリーには買ってあるがな」
「ルルーシュ…ナナリーは愛しているけど僕のことは愛していないの?」
「お前、本と薔薇を貰って嬉しいのか?大方、本は埃を被ったまま放置され、薔薇は枯れるのが落ちだろう?」
「それは、・・・」
「違うか?」
「おっしゃる通りです」
「だったら、いらないものを貰うよりは、こうやって一緒に過ごす方がいいじゃないか」
その言葉を聞いた瞬間、さっきまで落ち込んでいたスザクが嬉しそうに笑った。
「ルルーシュv」
「買い物続き行くぞ、さっきは俺が振り回したから今度はお前に付き合ってやる」
と言うやいなや、レシートを掴みルルーシュは先に出口に向かって歩き出してしまった。


「ルルーシュ耳が赤いよ」
「煩い、黙れ!」










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